乳腺腫瘍の結果は悪性でした。
動物病院の先生
「悪性と言っても、悪いところは全部摘出したので大丈夫ですよ。でも定期的に検診が必要になります」
でも、心配ですね。
その結果を知っているわけはないのですが、妙に寂しそうに見えます。
まだ、エリザベスカラーは取れません。
そういう姿をブログで晒すのもどうかと思いまして、今回は写真なしです。代わりに別の犬の話。
ハードボイルドというかノワール作家という印象が強い新堂冬樹ですが、エログロの強いものは読むと疲れてくるので、これまで読んだことはありません。しかし、店頭でこの表紙に魅入られて買ってしまったのです。私のイメージしていた新堂冬樹とは全然違うのですが…
『忘れ雪』 (角川文庫)
新堂 冬樹 (著)
価格:¥780
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この本、恋愛小説です。
冒頭はかなり少女趣味。
両親を交通事故で亡くして、親戚に引き取られた不幸な少女。公園で傷ついた子犬を見つける。この子犬を救ってくれる獣医の息子の青年に恋心を抱く少女は別の親戚に引き取られることになり、7年後の3月15日(2人の出会いの日)にこの公園で再開を誓い合う…
こちらが恥ずかしくなるくらいにセンチメンタル。恋愛小説と考えても稚拙なストーリーかもしれません。
この青年は獣医となり父親の動物病院を継ぐのですが、動物病院内の描写が獣医じゃないと書けないくらいに精緻で、驚きました。筆者は獣医じゃないですよね。動物の病気のこと、医療機械や器具のこと、治療法や手術…とても素人では書けない描写です。
私の関心は動物病院や動物、それに接する獣医である青年、看護師たちに向けられていきます。そうか、こういう世界なんだ…
ヤブの獣医も当然いるんでしょうが、獣医の仕事は想像以上に負荷の高い仕事なのだと感じました。それは肉体的にも精神的にもです。
また、モモがこういう状態の時にこんな小説を読んだせいか、ペットに対する考え方が変わってきている自分に気付きました。ご主人様に喜んでもらおうとする健気な動物たち。それに対して、お金がないからと粗末な食餌しか与えなかったり、散歩に連れて行かなかったり、十分な治療をしてあげなかったりする飼い主達がこの世の中には沢山います。
私の近所にも、犬を置いて夜逃げした家族がいました。思い出すたびに憤りを感じます。
さて本作の後半は、前半の温かい雰囲気から一変して、ミステリー小説っぽい展開になり、一気に読めました。ややノワールがかったストーリーとなりますが、恋愛小説であることを意識してか、抑え気味と感じました。この前半と後半のカラーの違いに違和感を感じる人も多いのかもしれません。しかし、個人的にはこの恋愛小説のトーンでこのまま進んでいくより、主人公である二人が互いの愛の深さを自覚していく過程で、盛り上がりをつける意味でも効果的だと思います。実際、恋愛も理想通りには進まないものですよね。
ラストはただじゃ終わらなかったのですが、これもまた新堂風なのでしょう。恋愛小説とノワールの両面を持つ本作。新堂ファンならずとも読む価値はあり。
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