ワタナベカミさん… あなたの気持ちは理解できるよ。
『ドナウよ、静かに流れよ』(文春文庫)
大崎 善生 (著)
価格:¥620
渡辺正臣(映像プロデューサー)
ワタナベマリア(女流棋士=ルーマニア出身)
この夫妻の愛娘、渡辺日実(ワタナベカミ19歳、ルーマニア留学中)が、ウィーンで33歳の自称指揮者「チバノリヒサ」とドナウに身を投げて死亡した。
私はノンフィクションという意識もせず、途中まで読み進めていました。本作は実際にあった心中事件を題材にしていますが、渡辺氏自身、かなり著名なCMプロデューサーであり、現在は東北芸術工科大学の教授ですし、マリアさんも20数年前に棋界では注目されたブロンドの女流棋士ですから、この2人がこのノンフィクションが世に出されることに抵抗はなかったのか-考えてしまいました。
この夫妻が子供に犯した罪は、それぞれあるんですね。
渡辺氏は、妻子がありながらシングルだと偽ってマリアと結ばれ、日実が生まれたこと(日実は「種馬」とまで言う)、マリアと日実が海外滞在中に浮気が発覚したことなどから、思春期の日実に男性に対する深い猜疑心を植え付けてしまっていました。
一方、独り実家を離れて暮らすことにも躊躇せず、自分の道を切り開いてきたマリアは、自分が歩んできた道を娘にも押しつけてしまう。しかし、19歳の日実には、独りで生活するには余りに厳しいルーマニアでの生活で精神的に追い詰められてしまいます。
自分の意志とは裏腹に、ルーマニアでの留学生活を送ることになった日実ですが、寂しさから千葉師久という精神を病んだ「自称指揮者」にその救いを求めていきます。千葉は、あくまで「自称」の域を超えない音楽の才能もない人間で、日実もそれを途中から気付いてしまうのですが、千葉自身の前途が閉ざされると同時に、日実も千葉に対する無償の愛を貫いて心中という痛ましい結末を迎えることになります。
両親である渡辺夫妻にとっては、この作品を日実へのレクイエムとして、出版を許したのではないか… そう思います。この顛末が、面白半分に世の人の知ることになったとしても、それを日実に対する償いとして、受け止める覚悟があったのではないでしょうか。
この心中劇は、新聞記事としてはありがちで読み流してしまいそうなものですが、ノンフィクションとして出版され、日実自身、両親の胸の痛みが読者に伝わることで、報われるものがあると感じされる作品でした。この真実が明らかにされなければやはり寂しい。
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